はじめに

　令和４年度第７回天童市議会定例会に当たり、市政運営の基本的な考え方について、所信の一端を申し上げ、市民の皆様並びに議員各位の御理解と御協力をお願いする次第であります。

　新型コロナウイルス感染症との闘いが始まってから３年が経過しました。令和４年度を振り返りますと、本市におきましても小中学校や家庭内での感染が猛威を振るいました。

　このような中、市民の皆様とともに日常とにぎわいを取り戻すため、３年ぶりに様々な事業を開催しました。春には、天童桜まつり人間将棋、夏には天童夏まつり、秋には天童ラ・フランスマラソンなど、市内外から多くの皆様にお越しいただきました。

　特に人間将棋は、藤井聡太竜王を迎えての開催がかない、舞鶴山山頂は大いに盛り上がったほか、インターネット中継で全国の皆様に御覧になっていただいたことを大変うれしく思ったところです。

　このような事業を感染対策を講じながら実施できましたことは、今後につながる大きな成果と考えています。

　そのほか、６月には、さくらんぼの新品種「やまがた紅王」が先行販売され、８月には、学校給食センターの食器洗浄機更新に併せて御飯用食器の提供を開始し、長年続いた「から弁」が不要となりました。

　９月には、閉館したビーフリーから施設を引き継いだ健康増進施設「Ｒe play！ ＴＥＮＤＯ（リプレイ　てんどう）」がオープンしました。併せて、学習支援室「リバテラスちえふる」もパルテ内で移転・拡大し、リニューアルオープンしました。

　また、昨年宣言しました「ゼロカーボンシティ」を実現するため「ゼロカーボンシンポジウム」を開催し、本市での脱炭素の機運を高めました。

　10月には、市将棋資料館開館30周年を記念して特別企画展を開催し、また、ガバメントクラウドファンディングを活用して「将棋会館移転新築」への寄附を募りました。全国の皆様から御寄附をいただき、12月に公益社団法人日本将棋連盟にお渡ししております。

　今月には、市民の皆様の窓口での負担を軽減するため、市民課にデジタル技術を活用した「書かない窓口」を導入したところです。

　さらに、エネルギー価格や様々な物価の上昇への対応策として、ガソリン・軽油・灯油専用プレミアム付商品券事業の実施や社会福祉施設等への支援を行いました。

　これらの施策により、令和４年度につきましては、市民満足度の向上につながったと考えております。これも議員の皆様を始め多くの市民の皆様の御協力の賜物と、深く感謝申し上げる次第であります。

　さて、新型コロナウイルス感染症が世界的に流行してから３年が経過したところですが、その間、社会は大きく変化しております。人々の働き方や生活の慣習が大きく変わったほか、デジタル・トランスフォーメーションへの機運が高まり、国を挙げて行政手続きや生活様式のデジタル化を進めております。

　また、気候変動問題への対応や多様性が尊重される社会の構築など、新たな価値観に対応していくことも重要となっております。

　私はこれまで、「子育て支援」、「観光・ものづくり」、「スポーツ・文化・健康づくり」という三つの日本一への挑戦を、市長就任以来一貫して掲げてまいりました。この挑戦は、変化の大きい社会の中でも、市内外に誇れる普遍的なまちづくりの指針だと認識しております。

　特に「子育て支援」に関しては、放課後児童クラブの継続的な整備、子育て未来館「げんキッズ」の設置、小中学校入学応援金「エール天（10）」の創設など、ハード・ソフト両面から取り組んでまいりました。

　しかしながら、昨年の出生数は、減少しております。このまま少子化が続くと、市の活力が徐々に失われていく懸念があることから、国の施策を注視しながら、一層の子育て支援を実施してまいります。

　「観光・ものづくり」に関しては、一昨年から分譲を開始した山口西工業団地に立地した企業が、いよいよ稼働いたします。

　この天童の地で雇用が創出され、新たなものづくりの事業所が稼働することを大変うれしく感じております。

　また、「将棋のまち天童」の名を更に高めるため、新たに将棋に関するモニュメントの設置を計画しております。

　「スポーツ・文化・健康づくり」に関しては、モンテディオ山形をはじめとするプロスポーツチームのホームタウンとして、チームを引き続き支援するとともに、市民が気軽に文化・スポーツに親しめるよう、施設の維持管理を計画的に進めてまいります。

　令和５年度においても、本市の将来都市像「笑顔 にぎわい しあわせ実感 健康都市 ～ともに明日をひらく てんどう～」の実現に向け、第七次天童市総合計画に掲げる各種施策に全力で取り組むとともに、市民目線に立った行政サービスの向上と更なる高みを目指し、三つの日本一への挑戦を続けていく所存であります。

令和５年度予算の大要

　我が国の経済動向は、新型コロナウイルス感染症の感染が依然として収束を見通せず、ロシアのウクライナ侵略に伴う世界的な資源価格・物価上昇の中ではありますが、持ち直しの動きを続けています。また、エネルギーや食料品を中心とした消費者物価の上昇は諸外国に比べて低い伸びにとどまっており、今後も、消費や投資を中心とした回復が期待されますが、欧米各国の金融引締めによる世界的な景気後退が懸念され、ウクライナ情勢の長期化等による原材料価格の上昇や供給制約等についても注視していく必要があります。

　こうした中、国では、足元の物価高を克服しつつ、経済再生の実現に向け成長分野への大胆な投資を進めるとともに、少子化対策・子ども政策の充実等を含む包摂社会の実現等による新しい資本主義の加速や、外交・安全保障環境の変化への対応などの政策課題について予算措置を講じ、我が国経済を持続可能で一段高い成長経路に乗せていくとしています。

　地方財政については、社会保障関係費の増加が見込まれる中、地域のデジタル化や脱炭素化の推進などの行政課題に対応しつつ、安定的な財政運営を行うために必要となる一般財源総額の確保について、対策が講じられたところであります。

　これらを踏まえ、令和５年度予算は、緊急度や優先度に応じて事業の取捨選択を行い、効率的かつ効果的な予算編成に努めて健全財政を堅持するとともに、第七次天童市総合計画後期計画の推進を図り、本市の着実な発展を目指したところであります。

　歳入予算については、国の経済見通しでは企業業績の回復等を背景として税収が増収となると見込まれていることを踏まえ、市税収入の増収を見込んでいます。国や県の補助金等の財源確保を積極的に図るとともに、公共施設等の長寿命化改修を進め、その財源としては市債と市有施設整備基金の積極的な活用を図ったところであります。

　歳出予算については、雇用の場の確保と定住人口の増加を図るため、新たな工業団地の整備に着手します。果樹産地として本市をさらに発展させるため、やまがた紅王やラ・フランスの販売促進、農業経営の支援に取り組んでまいります。市立図書館については、さらなる活性化と新たな付加価値の創造のため、リノベーション基本計画の策定を行います。少子化対策を推進するとともに、本市の重点施策である子育て支援につきましては、日本一子育てのしやすいまちを目指して継続して取り組んでまいります。

　この結果、令和５年度の一般会計予算は277億８，000万円で、前年度比１億５，000万円、０．５％の減としました。また、一般会計並びに特別会計、企業会計を合わせた予算総額は、494億869万９千円で、前年度比５億８，452万４千円、１．２％の増としました。

令和５年度重点施策

　次に、令和５年度の重点施策について、第七次天童市総合計画の基本計画に沿って、御説明申し上げます。

（健康と健やかな成長を支え合うまちづくり）

　初めに、「健康と健やかな成長を支え合うまちづくり」に関する主な施策について申し上げます。

　市民の運動習慣定着や健康意識向上を促し、健康増進を図るため、健康ポイント事業にスマートフォンアプリを導入して実施します。

　保護者の経済的負担の軽減を図るため、初回の検査費用を全額助成する新生児聴覚検査費助成事業を実施します。

　入所児童数増加に対応するため、干布ひまわり児童クラブの増築事業を実施します。

　特別支援学校へ通学する児童・生徒及び保護者への支援を図るため、特別支援学校送迎等支援事業を拡充して実施します。

　子育て世帯の経済的負担を軽減するため、小学校及び中学校に入学した子の保護者に対し、小中学校入学応援金「エール天( 1 0 )」 支給事業を継続して実施します。

　健康増進施設「Ｒe play！ ＴＥＮＤＯ (リプレイ　てんどう)」の料金体系を見直し、利用者の増加を図ります。

　病院事業については、引き続き新型コロナウイルス感染症に対応した発熱外来の診療等に取り組むことにより、地域に根差した安全で質の高い医療の提供に努めてまいります。

（産業の活力と魅力あふれるまちづくり）

　次に、「産業の活力と魅力あふれるまちづくり」に関する主な施策について申し上げます。

　日本一のラ・フランス産地として知名度の向上を図るため、天童ラ・フランスピーアール事業を実施します。

　さくらんぼの新品種「やまがた紅王」の本格販売に併せて、独自パッケージの開発などを行うやまがた紅王販売促進事業を実施します。

　「人間将棋」をより華やかに演出するため、やぐら等のセットを刷新する人間将棋セットリニューアル事業を実施します。

　将棋にこだわったまちづくりを更に進めるため、将棋駒アイデア作品設置事業と、将棋のまちシンボル設置事業を実施します。

　地域経済の活性化と安定した雇用の場を作るため、新工業団地整備事業を実施します。

　10年後に目指すべき農地利用の姿を示す「目標地図」の素案作成に向けて、農業従事者の意向把握を行う地域計画策定推進緊急対策事業を実施します。

（住みよい環境と安心を守るまちづくり）

　三つ目に、「住みよい環境と安心を守るまちづくり」に関する主な施策について申し上げます。

　大規模な災害に備え、関係機関相互の協力体制を強化し、防災意識の高揚を図るため、山形県・天童市合同総合防災訓練事業を実施します。

　空き家問題の解決を促進するため、空き家のデータ等を管理するシステム及び相談専門窓口が一体化した空き家活用支援事業を実施します。

　中古住宅や空き店舗等の利活用を促進し、空き家発生の未然防止を図るため、中古物件等の購入や改修を支援する、中古物件等取得支援事業を実施します。

　地域から苦情が寄せられている「飼い主のいない猫」等の不妊去勢手術を支援する、猫不妊去勢手術支援事業を拡充して実施します。

　脱炭素社会の実現と環境問題に関する意識の高揚を図るため、多様な世代を対象とした環境教育事業を実施します。

　道路等の改良や維持補修等を計画的に実施するほか、市道橋梁工事についても引き続き取り組みます。

　消防事業については、消防団の年額報酬を増額する消防団報酬改定事業を実施します。

　水道・下水道事業については、引き続き健全な経営に努めながら老朽施設の対策を進めてまいります。水道事業は、安全な水を安定して供給するため、老朽管路の耐震化や配水施設の更新等を計画的に実施します。下水道事業は、汚水管渠の調査と更生、マンホール蓋の更新等を計画的に実施します。

（夢をはぐくむ学びのあるまちづくり）

　四つ目に、「夢をはぐくむ学びのあるまちづくり」に関する主な施策について申し上げます。

　天童市民芸術祭が60周年を迎えるため、市民芸術祭60周年記念事業を実施します。

　全国や世界で活躍できる次世代のトップアスリートを育成するため、トップアスリート育成強化事業を実施します。

　障がいのある、ないにかかわらず一緒に学習する機会を積極的に設けるため、インクルーシブ支援員配置事業を実施します。

　市立図書館の大規模改修に向けて、基本計画を策定する市立図書館リノベーション事業を実施します。

　ラ・フランスの生産量日本一を全国にピーアールし、参加ランナーの交流を深める天童ラ・フランスマラソン事業を実施します。

　モンテディオ山形のホームタウンとして、引き続きモンテディオ山形支援事業を実施します。

（健全な行財政をともに築くまちづくり）

　最後に、「健全な行財政をともに築くまちづくり」に関する主な施策について申し上げます。

　デジタル技術やデータの活用が必要となる業務に対応するため、職員へのＤＸ研修や資格取得の支援を行うＤＸ人材育成事業を実施します。

　市庁舎のゼロエネルギー化の可能性を調査する、市庁舎ＺＥＢ(ゼブ)化可能性調査事業を実施します。

　市制施行の65周年に合わせて、記念式典開催事業を実施します。

　ふるさと納税については、地場産業と伝統工芸等の振興を図るため、賛同する寄附者を全国から集めるように取り組んでまいります。

　以上が令和５年度における施策の大要であります。